「英語学概論」補助資料
名桜大学図書館の参考文献、リポジトリで閲覧可能な論文、ウェブサイト情報を、こちらのページにまとめています。[PDF] は、リンク先のリポジトリで読むことができる論文です。
授業連絡は、Universal Passportで配信します。
テキスト
テキストはこちら。進学希望であれば、各Chapterの参考文献を活用して通読しておくことが望ましいです(院試対策が楽になります)。
「言語学概論Ⅱ」と同時履修すると、形態論・意味論・語用論を中心に、諸分野の理解を体系的に深めていくことができます。
参考文献@名桜大学図書館
リンク先は書誌情報です。
・西光義弘(編)1997.『日英語対照による英語学概論』東京:くろしお出版.
英語の術語がわからないときは、以下の文献で調べましょう。
・寺沢芳雄(編)2002.『英語学要語辞典』東京:研究社.
・中野弘三・服部義弘・小野隆啓・西原哲雄(監修)2015.『最新英語学・言語学用語辞典』東京:開拓社.
「英文法」「言語学概論Ⅰ, Ⅱ」のテキストも、必要に応じて参照下さい。各章の著者による本も有効です(図書館で探しましょう)。
参照ウェブサイト等
本科目の内容について詳しく学ぶには、Martin Hilpert先生のYouTubeチャンネル(英語)がお勧めです。
図書館の参考文献、国内の研究者によるウェブサイト等については、本ゼミの卒論ページを参考に。
随時更新します。
第1回:オリエンテーション
本科目は「英文法」「言語学概論Ⅰ, Ⅱ」の集大成といえます。まずは言語科学の諸分野を概観し、これまでに学んだ知識と関連付けながら理解を深めていきます。音声学・音韻論の実技など、これまでの授業を復習しながら、英語で書かれたテキストを読む訓練を行います。
第2回:英語学、理論言語学
・京都大学 2012年度 退職教員最終講義「科学哲学から見た言語理論の批判的検討 -言語科学の未来に向けて-」山梨正明(人間・環境学研究科教授)
20世紀以降の理論言語学の歴史については、こちらの動画をどうぞ。構造主義言語学から認知革命へ。現在へと続く時代の渦中を生きた経験から、学問パラダイムの変化について論じた最終講義です。参考文献はこちら。
山梨正明. 2000.『認知言語学原理』東京:くろしお出版.(特に第1章、第6章を参照)
・ノーム・チョムスキー教授講演会 The Architecture of Language Reconsidered 「言語の構成原理再考」・Capitalist Democracy and the Prospects for Survival 「資本主義的民主制の下で人類は生き残れるか」
生成文法からは、こちら。2014年3月に行われた国内講演。YouTubeの英語字幕(自動)を使うとわかりやすいです。
講演(英語)の内容は、上智大学の学術情報リポジトリで公開されています。
Chomsky, Noam. 2015. The Sophia Lectures, In Sophia Linguistica: Working Papers in Linguistics 64. Sophia Linguistic Institute for International Communication, the Graduate School of Languages and Linguistics, Sophia University.(ここで読めます。冊子体は、在庫があれば購入できます)。
翻訳・出版されました。
ノーム・チョムスキー(著)福井直樹・辻子美保子(翻訳)2015.『我々はどのような生き物なのか:ソフィア・レクチャーズ』東京:岩波書店.
・文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域「共創的コミュニケーションのための言語進化学」
名桜大図書館所蔵の文献はこちら。2012年出版につき、その後の研究の進展に注意。
藤田耕司・岡ノ谷一夫(編)2012.『進化言語学の構築:新しい人間科学を目指して』東京:ひつじ書房.
第3回:英語史
・比較言語学については、Martin Hilpert先生のYouTubeチャンネルIntro to English LinguisticsのSession 15 Historical linguistics 1: The prehistory of Englishに詳しいです。本ウェブサイト内では、こちらに参考情報があります。以下も参照:
#4253. 「対照言語学」と「比較言語学」は似て非なる分野
#4686. 比較言語学では音の類似性ではなく対応こそが大事(hellog~英語史ブログ)
「hellog~英語史ブログ」の情報と活用方法については、第3回の参考ウェブサイト欄を参照。
・#4361. 英語史は「英語の歴史」というよりも「英語と歴史」(hellog~英語史ブログ)
テキストのポイントは、これに尽きます。「外面史 (external history)」が語られてから、それに関連する各時代の言語的特徴が述べられています。Chapter 2の後半部は「内面史 (internal history)」に関する話題が中心です。
・英語史の時代区分については、後述する家入 (2007) の第2章を参照して下さい。hellogにも、概説的な記事があります:
#1524. 英語史の時代区分
#2994. 後期近代英語期はいつからいつまでか?(hellog~英語史ブログ)
・Canterbury Talesについては、Hilpert先生の動画においても言及があります。中英語の発音については、YouTubeで“General Prologue” “Canterbury Tales” “Middle English”といったキーワードで検索を行うと、朗読の動画を視聴することができます。
・Canterbury Tales, William Shakespeare作品以降の話題については菊地翔太先生(専修大学)のページ内「英語学の諸問題1」にも詳しいです。動画、「hellog~英語史ブログ」の該当記事へのリンク等、各トピックについての資料が充実しています。
・名桜大学図書館にも関連書籍があります(第3回の参考文献欄を参照)。興味のある方は、ぜひ古英語・中英語の読解に挑戦してみてください。
・Lord's Prayer(主の祈り)については「菊地翔太(Shota Kikuchi)のHP」にコーナーがあります。
Martin Hilpert先生によるYouTubeのSession 16 Historical linguistics 2: Old English and Middle Englishでは、各時代の英語の特徴に注目して比較しながら、各時代の歌詞の解説が行われています。
参考文献
家入葉子. 2007.『ベーシック英語史』東京:ひつじ書房.
寺澤盾. 2008.『英語の歴史: 過去から未来への物語』東京: 中央公論新社.
寺澤盾. 2016. 「変容する現代英語:英語史と英語教育の接点」『関東英文学研究』8: 11-18. [PDF]
堀田隆一. 2016.『はじめての英語史:英語の「なぜ?」に答える』東京: 研究社.
唐澤一友. 2016.『世界の英語ができるまで』東京: 亜紀書房.
G.チョーサー(著)苅部恒徳他(編訳注)2000.『原文対訳「カンタベリィ物語・総序歌」』東京:松柏社.
寺沢芳雄・川崎潔(編著)1993.『英語史総合年表:英語史・英語学史・英米文学史・外面史』東京:研究社.
参考ウェブサイト
「京大先生シアター」より家入葉子教授(文学研究科)「英語史 ことばが変化し続けることの意味」
英語史研究のアプローチと魅力など。
研究社『はじめての英語史』コンパニオン・サイト
英語史の各トピックについて詳しい。連載形式。
hellog~英語史ブログ
堀田隆一先生(慶應義塾大学)のウェブサイト。資料・参考文献リスト等も充実(音声配信もあり)。活用方法についてはこちらの記事を。
第4回:形態論
・本章は、「英文法」の「品詞」と「言語学概論Ⅰ」(林担当)の「形態論」の、実質的な復習となっている。本科目の参考文献も参照のこと。
・接頭辞・接尾辞を語源に遡って調べる場合は、例えば以下の図書館所蔵文献等を参照:
小西友七(編集主幹)2001.『ジーニアス英和大辞典』東京:大修館書店.
寺沢芳雄(編)1997.『英語語源辞典』東京:研究社.
松田徳一郎(編集代表)1999.『リーダーズ英和辞典(第2版)』東京:研究社.
The Oxford English Dictionary (2nd Edition). 1989. Oxford: Oxford University Press.
第5回、第8回:意味論
・「言語学概論Ⅱ」の復習となっている。当該科目のテキストも参照されたい。この章には、形式意味論・語彙意味論・認知意味論の話題が存在するため、パラダイムの混同に注意。
本学図書館の参考文献
西原哲雄・高橋潔・中村浩一郎. 2014.『現代言語理論の概説』東京:鷹書房弓プレス.(テキストの内容全般については、第4章に詳しい)
G.レイコフ・M.ジョンソン. 渡部昇一・楠瀬淳三・下谷和幸(訳)1986.『レトリックと人生』東京:大修館書店.(プロトタイプ理論、メタファー、メトニミー)
鍋島弘治朗. 2011.『日本語のメタファー』東京 : くろしお出版.
鍋島弘治朗. 2016.『メタファーと身体性』東京 : ひつじ書房.
谷口一美. 2006.『学びのエクササイズ 認知言語学』東京:ひつじ書房.
山梨正明. 2000.『認知言語学原理』東京:くろしお出版.(特に第2章、第5章を参照)
参考ウェブサイト
#2317. 英語における未来時制の発達(hellog~英語史ブログ)
第6回、第7回:統語論
・構成素についての基本概念を、品詞・文型(「英文法」の既習事項)の知識と関連付けて押さえておく。議論の順序(仮説検証型になっている)がわかりにくい場合は、テキストの日本語による解説も参照のこと。現代言語学の基本概念(と言っていいと思う)が提示されているため、主要概念と論証の方法については押さえておく(慣れておく)とよい。
・Chapterを読んで「Rule/List Fallacy(ルールとリストの誤謬)」に感じた方は、山梨組へようこそ。
参考文献
大津由紀雄・今西典子・池内正幸・水光雅則(編)2002.『言語研究入門:生成文法を学ぶ人のために』東京:研究社.
町田健. 2000.『生成文法がわかる本:生成文法をできるかぎりやさしく解説』東京:研究社.
第9回:語用論
・この章はとてもバランスがとれた内容となっていると思う。「言語学概論Ⅱ」のテキストでは、計算・記号主義的なパラダイムの語用論(関連性理論)側に則り執筆されている。語用論系の入門書は「とっつきにくい」分量・内容の専門性であったり、パラダイムとして著者の立脚するアプローチに偏っていたり、というものが多く、一冊で全てをカバーする適切な入門書を挙げることは難しい印象。本章は、ポライトネス、会話の公理、発話行為、といった主要概念を網羅している。まずはこの英文をじっくり読むとよいと思う。その一方で、近年へと至る語用論研究、例えば「関連性理論 (relevance theory)」等については手薄である。図書館の参考文献で知識を補充されたい。
・「英文法」の法助動詞、仮定法で学んだcould, wouldの用法とも関連づけて整理するとよい。
名桜大図書館の参考文献
テキストの話題と関わるものは以下。「語用論」と検索すると、その他文献がヒットするものの、著者の立脚するアプローチにより内容が異なるため注意が必要。
ジェフリー・N.リーチ. 池上嘉彦・河上誓作(訳)2000.『語用論(復刊版)』東京:紀伊國屋書店.
ポール・グライス. 清塚邦彦(訳)1998.『論理と会話』東京:勁草書房.
山梨正明. 1986『発話行為(新英文法選書 第12巻)』東京:大修館書店.
ポライトネスについては、こちらを:
Brown, Penelope and Stephen C. Levinson. 1987. Politeness: Some Universals in Language Usage. Cambridge: Cambridge University Press.
ペネロピ・ブラウン, スティーヴン・C・レヴィンソン(著)斉藤早智子他(訳). 2011.『ポライトネス:言語使用における、ある普遍現象』東京:研究社.
滝浦真人. 2005.『日本の敬語論:ポライトネス理論からの再検討』東京:大修館書店.
滝浦 (2005: 157-206) では、Brown and Levinson (1987) のポライトネス・ストラテジーが詳説されている。Brown and Levinson (1987) の会話例の和訳と解説もある。
以下は応用編(?)で、意味論寄りの語用論。響鳴 (resonance) など、近年の相互行為言語学に繫がるテーマも取り上げられている。
崎田智子・岡本雅史. 2010.『言語運用のダイナミズム:認知語用論のアプローチ』東京:研究社.
・また、本授業のテキストでは、歴史語用論の話題も取り扱われていない。日本語用論学会の学会誌『語用論研究』のページで公開されている小野寺 (2006) 等で知識を補うことができる。歴史・社会言語学という分野もまた学際的で、社会言語学・英語史との親和性が強いか。これもまた、諸分野の研究者が関わっており研究文脈のフォローが大変である(その分、多くの研究者に関心を寄せられる可能性も秘めていると言えるかもしれない)。研究する場合は、先行研究における位置づけを丁寧に議論できるとよい。以下は英語史等での分析手法を日本語研究に援用したもの(研究背景について、詳しくは「はじめに」「おわりに」や前著を参照)。冒頭で述べられている通り、歴史語用論に位置づけられる。
椎名美智. 2021.『「させていただく」の使い方:日本語と敬語のゆくえ』東京:KADOKAWA.
「させていただく」シリーズ(椎名・滝浦編 2022)の記述研究っぷりは圧巻。近年の語用論学会では、新規表現 (novel expression) 系の研究が増えているものの、日本語系の学会や、生成系のパラダイムからは相手にされていない模様(先行研究が一通り出揃うまで、もう暫く時間を要しそうというのも一因ではある)。ここは、ぜひ学際的に、「させていただく」シリーズのような記述を行った上で、構文あたりの枠組みで包括的に捉え直していってほしいところ。査読誌で勝負しましょう。
第10回:音声学・音韻論
「言語学概論Ⅰ」のページ「音韻論・音声学」を参照のこと。テキスト英文の英語音声学の基礎知識(子音、母音)が関わる箇所については、竹林・清水・斎藤 (2013) をはじめとする参考文献で調べながら読むことを推奨。
・発音技能に限らず、習熟度・到達度をテストで評価する上で念頭に置くべきことについては、こちらを参照。
靜哲人. 2002.『英語テスト作成の達人マニュアル』東京: 大修館書店.
第11回:社会言語学(国際共通語としての英語)
「多様性」という言葉の魅力に注意。研究する場合には、何を切り取って題材とするかが難しい。具体的で、調査が可能な範囲に絞ってテーマ設定を行う必要がある。英語史の参考文献、規範文法の議論も関わる。
本学図書館の参考文献リスト
田中春美・田中幸子(編)2012.『World Englishes:世界の英語への招待』京都: 昭和堂.
嶋田珠巳. 2016.「世界の英語に目を向けると、英語はもっと面白い!」, 大津由紀雄・嶋田珠巳(編)『英語の学び方』71-86. 東京: ひつじ書房.
・方言と言語の違い、規範性、琉球諸語に関わる議論は「国際文化専門演習Ⅰ, Ⅱ」のページ(Chapter 14以降)を参照。英語教育との関わりでは、「ELFの実践の場」と仮定して学士課程の英語教育を行う神戸大学ベストティーチャー・石川慎一郎先生のページも参照。
動画で概要を知りたいときは、こちらを。
【学問小咄】言語学「勉強としての『英語』から世界を知るための『英語』へ」/木本幸憲(兵庫県立大学環境人間学部「かんなび」)
第12回:社会言語学(地域差とバリエーション)
Lerner, Alan. 1997. My Fair Lady. London: Penguin.
寺澤盾. 1993.「現代英訳聖書と性差別表現」『言語文化』29: 25-38. [PDF]
中尾俊夫(著)児馬修・寺島廸子(編)2003.『変化する英語』東京:ひつじ書房.
第13回:心理言語学
児玉一宏・野澤元. 2009.『言語習得と用法基盤モデル:認知言語習得論のアプローチ』東京: 研究社.
白井恭弘. 2008.『外国語学習の科学:第二言語習得論とは何か』東京: 岩波書店.
鈴木孝明・白畑知彦. 2012.『ことばの習得:母語獲得と第二言語習得』東京: くろしお出版.
第14回:応用言語学
・学会、研究文脈、研究者の関心などにより「応用言語学 (applied linguistics)」の定義が異なるため注意する。このテキストでは何が「応用言語学」として挙げられているか、注意して英文を読むとよい。
・例えば、名桜大学の半嶺まどか先生が従事されている「言語継承」が関わる研究は、学際的かつ国際的である。いわゆる言語復興に関しては、言語政策の先行研究も参照される。これらも広義の「応用言語学」と位置づけられるかもしれない。研究者の論文・発表ごとに、術語・分野が何を意図・意味するのかについてはよく注意したい。1970年代頃の、いわゆる「応用言語学」以降の学問的な潮流も念頭に置くとよい。paradigm-consciousな姿勢が望ましい(が、異論はあるかもしれない)。
・以下、クラスディスカッションに関連する文献・動画等の情報:
宮田幸一. 1970.『教壇の英文法: 疑問と解説(改訂版)』東京: 研究社出版.
東京外国語大学体験授業「(英語で)テキストを読むこと—文化研究のストラテジー」(講師:加藤雄二准教授)
「翻訳」という営みについて。職位は当時の情報です。